ChatGPTやGeminiなど、現在使われている生成AIの多くはインターネット経由でクラウド上のAIを利用します。
しかし今後は、AIをクラウドだけでなく自分のパソコンの中で動かす「ローカルAI」が一気に身近になるかもしれません。
その流れを象徴するPCとして登場したのが、GMKtecの「EVO-X5 Pro」です。
EVO-X5 Proは、AMDの「Ryzen AI Max+ PRO 495」と192GBのユニファイドメモリを搭載し、GMKtecは最大300B(3,000億)パラメータ規模のLLMをローカル環境で実行できるとしています。2026年9月28日に発売されました。
一見すると「超高性能なミニPC」に見えますが、注目したいのは性能そのものより、
AIをインターネットの向こう側ではなく、自分の机の上で動かせる
という点です。
この記事では、
- ローカルAIとは何なのか
- EVO-X5 Proで何ができるのか
- 192GBものメモリが必要な理由
- 普通のAI PCとの違い
- メリットとデメリット
- どんな人に向いているのか
- 一般ユーザーが今すぐ買い替える必要があるのか
を分かりやすく解説します。
EVO-X5 Proとは?
EVO-X5 Proは、GMKtecがIFA 2026で発表した高性能AIワークステーションです。
GMKtecは従来から小型PCを数多く展開していますが、EVO-X5 Proは一般的なミニPCというよりも、ローカルAI処理を重視したデスクトップAIマシンという位置付けです。
主な仕様は以下の通りです。
| 項目 | EVO-X5 Pro |
|---|---|
| CPU | AMD Ryzen AI Max+ PRO 495 |
| CPUコア | 16コア/32スレッド |
| 最大クロック | 5.2GHz |
| GPU | Radeon 8065S Graphics |
| GPUコア | 40CU |
| NPU | 最大55 TOPS |
| メモリ | LPDDR5X 192GB |
| メモリ速度 | 8,533MT/s |
| SSD | M.2 PCIe 4.0 |
| SSDスロット | 3基 |
| 最大ストレージ | 24TB |
| 有線LAN | 10GbE×2 |
| Wi-Fi | Wi-Fi 7 |
| USB | USB4/USB4 V2対応 |
| OS | Windows 11 Pro対応 |
CPUのRyzen AI Max+ PRO 495についてはAMDも、16コア32スレッド、Radeon 8065S、最大192GBメモリ、NPU最大55 TOPSという仕様を公開しています。CPU・GPU・NPUを合わせたプラットフォーム全体では最大131 TOPSとされています。
そもそもローカルAIとは?
普段ChatGPTなどを利用すると、
自分のPC
↓
インターネット
↓
クラウド上のAIサーバー
↓
回答
という流れで処理されます。
一方、ローカルAIでは、
自分のPC
↓
PC内のAIモデル
↓
回答
という形になります。
つまり、AI処理の一部または全部を自分のパソコンの中で完結できます。
これによって、
「インターネットにつながなくてもAIを使う」
「社外に出したくないデータをAIに分析させる」
「クラウドAIのAPI利用料を気にせず大量処理する」
といった使い方が可能になります。
GMKtecもEVO-X5 Proの用途として、ローカルLLM、AIエージェント、プライベートAIナレッジベース、AIを使ったソフトウェア開発、AI研究などを挙げています。
192GBメモリは何のため?
EVO-X5 Proで特に目を引くのが、
192GBという非常に大きなメモリ容量
です。
一般的なPCなら16GBや32GB、性能を重視したPCでも64GB程度で十分なケースが多いため、「192GBも何に使うの?」と思う人も多いでしょう。
その理由の一つがLLMです。
大規模なAIモデルをローカルで動かす場合、モデルそのものを保持するために大量のメモリが必要になります。
EVO-X5 ProではCPUとGPUが利用できるユニファイドメモリを採用し、最大192GBのうち最大160GBをグラフィックス側に割り当てられる設計です。GMKtecは、この構成によって最大300Bパラメータ級のLLMをローカル実行できるとしています。
ここが従来の一般的なAI PCとの大きな違いです。
「300B対応」=ChatGPTと同じ性能ではない
ここは誤解しやすいポイントです。
300Bとは、
約3,000億パラメータ
というモデル規模を表しています。
しかし、
「パラメータが多い=必ず頭がいい」
「300Bが動く=ChatGPTと同等」
という意味ではありません。
AIの性能は、
モデルの設計
学習データ
量子化方法
推論ソフト
コンテキスト長
AI向け最適化
などによって大きく変わります。
そのためEVO-X5 Proの価値は、
「ChatGPTと同じAIが使える」
ことではなく、
これまでクラウドや大型ワークステーションが必要だった規模のAIモデルをデスクトップPC上で扱える可能性が出てきた
点にあります。
普通のAI PCとは何が違う?
最近は「AI PC」という言葉をよく見るようになりました。
一般的なAI PCにもNPUが搭載されており、
画像処理
音声認識
Web会議の背景処理
AIアシスタント
などを効率よく処理できます。
EVO-X5 ProもNPUを搭載していますが、特徴はそこだけではありません。
一般的なAI PC
軽量なAI処理
↓
NPUなどで効率化
EVO-X5 Pro
大量メモリ+高性能GPU
↓
大規模なAIモデルそのものをローカルで動かす
という違いがあります。
つまり、
「AI機能が付いているパソコン」
というより、
「AIを自分で動かすためのパソコン」
に近い製品です。
EVO-X5 Proでできそうなこと
自分専用のAIチャット
ローカルLLMを導入すれば、インターネットにデータを送らずにAIと会話できます。
例えば、
社内文書
自分のメモ
研究資料
プログラムコード
などをAIに読み込ませて、自分専用のナレッジAIを構築することも考えられます。
AIによるプログラミング
ソフトウェア開発では大量のコードをAIに読ませるケースがあります。
機密性の高いコードをクラウドAIへ送信したくない企業にとって、ローカルAIは選択肢になり得ます。
AIエージェント
今後特に注目されているのがAIエージェントです。
従来の生成AIは、
質問
↓
回答
が中心でした。
AIエージェントは、
目標を与える
↓
考える
↓
必要なツールを使う
↓
作業する
↓
結果を確認する
という複数の工程を自律的に処理します。
GMKtecがEVO-X5 Proを「Agentic PC」と呼んでいるのも、こうしたAIの使い方を想定しているためです。
画像・動画などのクリエイティブ作業
Radeon 8065S Graphicsは40CUを備えているため、AIだけでなく画像処理や動画編集などの用途も想定されています。
ただし、特定の生成AIソフトやCUDA前提のAI環境を使う場合は、NVIDIA製GPUを搭載したPCの方が適している場合があります。
「AIなら何でもEVO-X5 Proが最適」というわけではありません。
EVO-X5 Proのメリット
大規模AIモデルを自宅で動かせる
最大の魅力です。
これまで大規模なLLMをローカルで動かそうとすると、大容量VRAMを搭載したGPUを複数用意するなど非常に大掛かりな構成が必要になることがありました。
EVO-X5 Proでは192GBのユニファイドメモリを一つのシステムで扱えます。
データを外部に送らずAIを使える
ローカルAIなら、処理内容によってはクラウドにデータを送信せずに完結できます。
企業データや研究データなど、外部へ送りたくない情報を扱う用途では大きなメリットがあります。
API料金を抑えられる可能性がある
クラウドAIのAPIを大量に利用すると、利用量に応じて費用が増えていきます。
ローカルAIではPC購入費や電気代は必要ですが、大量のAI処理を繰り返す用途ではクラウド利用料を減らせる可能性があります。
コンパクト
EVO-X5 Proの本体サイズは高さ221×幅80×奥行195mm、重量は約2.5kgです。
一般的な大型ワークステーションと比べるとかなりコンパクトです。
EVO-X5 Proのデメリット・注意点
一般ユーザーにはオーバースペック
Web閲覧、Office、動画視聴、通常のブログ作業程度で192GBメモリはまず必要ありません。
ChatGPTやGeminiを普通に使うだけなら、現在使っているPCからEVO-X5 Proへ買い替える必要性は低いでしょう。
AI環境を自分で構築する必要がある
PCを購入しただけでChatGPTのようなAIが自動的に使えるわけではありません。
利用したいAIモデルやソフトウェアを導入し、設定する必要があります。
ローカルLLMを初めて使う人にとっては、この部分が大きなハードルです。
192GBメモリは交換できない
公式仕様では192GB LPDDR5Xメモリはオンボード実装となっており、交換・増設はできません。
一方、SSDはM.2スロットを3基備え、合計最大24TBまで拡張できます。
発売直後で実測レビューがまだ少ない
2026年9月28日に発売されたばかりのため、現時点では、
実際のLLM生成速度
300Bモデル利用時の速度
消費電力
ファンノイズ
長時間利用時の温度
ソフトウェア互換性
などについて第三者による十分な検証がまだ揃っていません。
公式日本サイトの商品ページにも、現時点では購入者レビューが掲載されていません。
スペックだけで判断せず、実機レビューが増えてから確認したいポイントです。
EVO-X5 Proが向いている人
EVO-X5 Proが特に向いているのは、
AI開発者
ローカルLLMを本格的に試したい人
企業内AIを構築したい人
AIエージェントを研究したい人
大量の機密データをAIで扱う企業
クラウドAIのAPIを大量利用している人
です。
このような用途なら、192GBメモリを活かせる可能性があります。
EVO-X5 Proが向かない人
反対に、
ChatGPTをたまに使う
WordやExcelを使う
ブログを書く
YouTubeを見る
軽い画像編集をする
といった用途が中心なら、EVO-X5 Proを選ぶ必要はほとんどありません。
一般用途ならGMKtecの下位モデルや、一般的なAI PCの方が現実的です。
特に、
「AI PCなら高性能なほどいい」
と考えて購入すると、性能をほとんど使わない可能性があります。
今使っているPCから買い替える必要はある?
多くの人は、今すぐ買い替える必要はありません。
現在ChatGPTやGeminiなどのクラウドAIで満足しているなら、そのまま利用する方が手軽です。
EVO-X5 Proの価値が出てくるのは、
「AIを使う」
から、
「自分のPCでAIそのものを動かす」
段階へ進みたい場合です。
ここは非常に大きな違いです。
クラウドAIとローカルAIはどちらがいい?
どちらか一方が完全に優れているわけではありません。
| 比較 | クラウドAI | ローカルAI |
|---|---|---|
| 導入しやすさ | ◎ | △ |
| 初期費用 | ◎ | △ |
| 大型モデル | ◎ | ○ |
| プライバシー | ○ | ◎ |
| オフライン利用 | × | ◎ |
| カスタマイズ | ○ | ◎ |
| メンテナンス | ◎ | △ |
| 大量処理 | 利用料が増える場合あり | PC性能の範囲内で利用 |
一般ユーザーならクラウドAI。
開発・研究・企業用途ならローカルAI。
という使い分けが当面は現実的でしょう。
ローカルAI PCは今後増える?
今回注目したいのはEVO-X5 Proという1台のPCだけではありません。
AMD自身もRyzen AI Maxシリーズをクリエイターや開発者向けAIプロセッサとして展開しており、CPU、GPU、NPU、大容量ユニファイドメモリを組み合わせた製品が増えています。
これまでAIは、
「巨大なデータセンターで動かすもの」
というイメージが強くありました。
しかし今後は、
クラウドAI
+
スマートフォンAI
+
PC内のローカルAI
という形で使い分ける時代になっていく可能性があります。
EVO-X5 Proは、その変化を分かりやすく示すPCの一つと言えそうです。
まとめ:EVO-X5 Proの本当の注目点は「192GB」だけではない
EVO-X5 Proは、
Ryzen AI Max+ PRO 495
192GBユニファイドメモリ
Radeon 8065S
最大24TBストレージ
10GbE×2
Wi-Fi 7
を備えた非常に高性能なAIワークステーションです。
しかし、本当に注目したいのはスペック競争ではありません。
これまでクラウド側にあった大規模AI処理が、
「自分のパソコンの中へ戻ってくる」
可能性が見えてきたことです。
一般ユーザーが今すぐ192GBのAI PCを必要とするわけではありません。
一方で、
企業内AI
AIエージェント
ローカルLLM
プライベートAI
AI開発
が広がれば、「PCにどれだけAIを動かせる能力があるか」がパソコン選びの重要な基準になる可能性があります。
EVO-X5 Proは、そんな「少し先のパソコンの姿」を先取りした製品として注目しておきたい1台です。
購入を検討する場合は、発売直後ということもあり、最新の販売状況と実機レビューを確認してから判断するのがおすすめです。





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